総務省が示した「通信履歴3〜6カ月保存」の意義とは
— プライバシーと実務を両立する現実解を考える —

2025年12月22日


1.はじめに

総務省は2025年9月、SNSを通じた詐欺などの被害抑止のため、SNS事業者らに通信履歴を最低でも3~6カ月程度保存することを求める事業者向け指針の改正案を公表しました。この改正案は、従来の「原則として通信履歴は速やかに破棄する」という方針から大きな転換を意味するものであり、SNS事業者に限らず、通信ログの扱いに関心を持つ多くの企業にとっても無視できない動きと言えます。
本稿では、この指針改正の背景と内容を整理したうえで、企業が実務上どのような課題に直面するのか、そして通信内容を記録せずに通信履歴を管理する一つの手段として、NetFlow/IPFIX技術およびネットフロー解析ソリューション「Flowmon」を活用する方法について考察します。

2.マルチクラウド構成が生む複雑性とリスク

近年、SNS上での誹謗中傷や詐欺被害が深刻化しています。特に2023年下半期以降、なりすまし型の偽広告を端緒としたSNS型投資詐欺などが急速に拡大し、社会問題として広く認識されるようになりました。

こうした被害に対して、被害者が発信者情報の開示を請求しても、事業者が通信履歴を既に削除しているため、加害者を特定できないケースが多発していました。この課題を受け、総務省の有識者会合が2025年7月にまとめた報告書案では、通信事業者に対して通信履歴を最低3~6カ月保存することを推奨する制度改正案が示されました。なお、本指針は法的義務ではなく、事業者に対する要請という位置づけであり、違反に対する直接的な罰則は設けられていません。しかし、世界的には通信ログの保存義務化が進んでおり、EUでは2018年に一般データ保護規則(GDPR)が施行され、英国では2023年にオンライン安全法が制定されるなど、各国で法整備が進んでいます。日本も今後、こうした国際的な流れに沿った法制化が進む可能性があります。よって、ガイドラインとして示された以上、多くの事業者が一定の対応を検討することが想定されます。
今回の指針で保存対象となる通信履歴には、以下のような情報が含まれます。

  • IPアドレス
  • 電話番号
  • 通信日時
  • アカウントに関する識別情報

いずれも通信内容そのものではなく、いわゆる「メタデータ」に該当する情報であり、メール本文やチャットメッセージの内容が保存対象となるものではありません。

3.NetFlowが最適な理由

この要請に対して、NetFlow/IPFIX技術が最適な解決策となり得ます。NetFlowの最大の特徴は、パケットのペイロード(実データ)部分を破棄し、通信に関するメタデータのみを記録することです。パケットをそのまま保存するフルパケットキャプチャ方式と比較すると、NetFlowのデータ量は1/500~1/1000程度となり、同じストレージ容量で遥かに長期間の通信ログを保存できます。そのため、3〜6カ月という保存期間の要請に対しても現実的なコストで対応しやすいという利点があります。また、通信内容(メール本文、チャットメッセージ、Webページの内容など)は記録されないため、利用者のプライバシーに配慮した形でログを保存できます。
NetFlowには、主に以下の情報が記録されます。

  • 送信元/宛先IPアドレス
  • ポート番号
  • プロトコル
  • 通信日時
  • 通信量(バイト数/パケット数)

これらの情報から「どの端末が」「いつ」「どのような通信を行ったか」といった通信の状況を把握できます。この点において、NetFlowは今回の指針が想定する考え方と親和性の高い方式の一つであるといえるでしょう。

4.Flowmonで実現できること

ネットフロー解析ソリューション「Flowmon」は、NetFlow/IPFIXデータを活用し、通信履歴の保存と分析を支援する製品です。ここでは、通信履歴管理の観点から代表的な機能を紹介します。

過去への遡及調査

先述のようにFlowmonは、ネットワーク上のフロー情報を取得し、「誰が」「いつ」「何をしたか」を可視化できます。これにより、以下のような分析が可能になります。

  • IPアドレスを基に端末毎の通信状況を可視化
  • 使用したアプリケーションの特定
  • 通常とは異なる通信パターンの検出

これらの情報は、単なるコンプライアンス対応だけでなく、セキュリティ対策やネットワーク運用の最適化にも活用できます。

レポーティングとコンプライアンス対応

Flowmonにはレポート機能が備わっており、任意の期間や条件で通信状況を整理したレポートを出力できます。特定のIPアドレスやアドレス範囲によるフィルタリング、トラフィック量による並び替えなどを行うことで、ネットワークの変化や異常を可視化できます。定常監視により長期的な視点でトラフィックの傾向を把握し、監査対応や社内会議のための文書作成を効率化できます。

セキュリティ強化への貢献

Flowmonは、単なる通信解析兼ログ保存ツールではありません。拡張プラグインである「Flowmon ADS(Anomaly Detection System)」を追加することで、フロー統計情報の定常的な評価に基づき、ネットワーク上の異常や不適切な振る舞いを検出できます。ポートスキャン、標的型攻撃、不正なアプリケーションの使用、情報漏洩の兆候など、様々なセキュリティインシデントを早期に発見し、対処することが可能になります。過去のログも長期間保存出来るため、インシデント発生後のフォレンジック調査に活用できます。

5.社会的意義と懸念事項

今回の指針改正には、被害者救済や犯罪抑止という明確な社会的意義があります。通信履歴が一定期間保持されることで、事後的な検証が可能となり、不正行為に対する抑止効果も期待されます。 一方で、懸念事項も存在します。最も重要なのは、通信履歴の保存拡大が監視社会化につながるのではないかという懸念です。現時点では3~6カ月という期間に限定されていますが、将来的に保存期間がさらに延長される可能性は否定できません。実際、警察庁は犯罪捜査のために保存期間を1年6カ月にする意見を出していましたが、今回は採用されなかった経緯があります。また、通信履歴というメタデータは、通信内容そのものではないものの、誰がいつ誰と通信したかという情報から、個人の行動パターンや人間関係を推測することが可能です。こうした情報の集積が、プライバシーに対する脅威となる可能性も指摘されています。

6.おわりに

通信の秘密という憲法上の権利と、被害者救済や社会的安全の確保。この二つのバランスをどう取るかが、今回の指針改正の本質と言えるでしょう。NetFlowは、この難しいバランスに対する最適解だと考えています。

図3


Flowmonのようなネットフロー解析ソリューションは、プライバシーに配慮しながら通信履歴を確保し、さらにセキュリティ強化やネットワーク運用の最適化という付加価値も提供します。今回の指針は直接的にはSNS事業者を対象としていますが、通信ログをどのように保存し、どのように活用するかという課題は、今後あらゆる企業に共通するテーマとなっていくでしょう。自由と安全の両立を図りながら、持続可能なデジタル社会を実現するための取り組みが求められています。

Flowmonについて、より詳しく知りたい方は、下記の資料をぜひご覧ください。

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