

AIとインフラの未来を語る
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当社の主要販売製品となるFlowmonをポートフォリオに持つProgress Software社(以降Progress社)は、隔年でパートナー社向けに交流イベントを開催しています。前回2023年10月のインドネシア・バリ島での開催に続き、2025年7月、ベトナム中部のリゾート都市・ダナンにて「APJ Progress Partner Summit 2025」が開催されました。アジア太平洋地域(APJ)の主要パートナーが一堂に会したこのイベントに、オリゾンシステムズは日本を代表するパートナーとして招待を受け、3日間にわたる会議とディスカッションに参加してまいりました。
Progress社が提供する各種インフラ管理・可視化ソリューションは、私たちのようなシステムインテグレーターにとって、お客様のIT運用を支えるうえで不可欠なツール群です。今回のサミットでは、これらの製品の進化に加え、同社が掲げる「AI First」戦略や、新たな販売・消費モデル、さらにはパートナーエコシステムの再構築に関する情報が共有され、非常に密度の濃いイベントとなりました。
AIによるトランスフォーメーションと企業戦略

基調講演では、Progress社のシニアバイスプレジデント Nicholas Ellis 氏が登壇。彼のセッションは、同社のビジネス変革の中心に「AI活用」が据えられていることを強く印象づけるものでした。
特に注目されたのは、本年買収を行ったAIスタートアップ「Nuclia」の技術をベースにした自然言語処理と要約エンジンの高度化です。これにより、膨大なログデータやシステム構成情報の検索・要約・提案が、RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を通じて飛躍的に効率化されるといいます。
また、全社的なAI推進を目的として、CAIO(Chief AI Officer)を新たに設置したことも発表されました。従来のインフラ管理にAIを融合させ、より自律的な運用、インシデントの予兆検知、セキュリティ強化を可能にする方向性が示され、業界全体の流れを牽引する同社の志向を理解することができました。
インフラ可視化の次なる段階へ

本イベントの技術セッションで、まず注目を集めたのは、Flowmonの新機能「脅威ブリーフィング」です。 Flowmon ADS(Anomaly Detection System)の脅威ブリーフィングの仕組みでは、世界中の脅威情報ソースを常時収集し、新たな攻撃や脆弱性、キャンペーンに関する重要情報を抽出・要約しています。これらの精査された脅威データは、Progressの更新サービスを介して各顧客環境のFlowmon ADSへ自動配信されます。Flowmonは、IoCや通信パターンを用いて過去およびリアルタイムのネットワークフローを解析し、該当する脅威を迅速に検知します。これにより、組織はグローバルな脅威インテリジェンスを即時活用し、能動的かつ効率的なサイバー防御を実現できます。
一方、長年にわたって信頼されてきたネットワーク監視ツール「WhatsUp Gold」も大きな進化を遂げました。従来のSNMPベースの監視構成に加え、FlowmonのNPM(Network Performance Monitoring)およびNTA(Network Traffic Analysis)エンジンを統合した「NTA+」が発表され、ネットワーク層(L2)からアプリケーション層(L7)までをシームレスに可視化できる統合監視が実現しました。この統合により、従来は複数のツールで分散して行っていた監視業務が一本化され、運用負荷の大幅な軽減が見込まれます。さらに、マルチテナント対応や柔軟なダッシュボード設定機能を備えたことで、全国規模の拠点をもつ企業や、複数のネットワークを並行運用する自治体・教育機関などにとっても、高い導入効果が期待されます。
特筆すべきは、これらのソリューションがProgress社のAIプラットフォームと連携して行く点です。これにより、IT部門の対応スピードが格段に向上し、業務継続性の向上にも直結します。インフラ可視化ツールは、単なる“見える化”から“意味のある洞察”へと進化を遂げつつあります。FlowmonとWhatsUp Goldは、AIの力を取り込むことで、より戦略的なインフラ運用の実現に貢献するプラットフォームとして、今後さらに多くの導入が進むことが予想されます。
実践事例に見るソリューションの実力

本セッションでは、Flowmon、WhatsUp Gold(WUG)、LoadMasterなどProgress Software社のインフラ管理ソリューションの国内外の実践事例が紹介されました。
Flowmonに関しては、香港の大手ITサービス企業が、複雑なハイブリッドクラウド環境におけるネットワークの可視化と脅威検知の強化を目的に導入。異常検知や挙動分析によって、MSPとしての競争力向上と監査対応を両立しています。また、オリゾンシステムズからは、既存のSNMP監視では把握できなかったトラフィックの原因分析において、FlowmonによるURLレベルの可視化が評価されたお客様事例が紹介されました。
WhatsUp Goldの事例では、台湾の半導体メーカーが、ISO 27001対応の構成管理と監視機能を活用し、セキュリティと可用性の両立を実現。さらにマレーシアの企業では、OTを含む統合的なIT/OT監視にWUGを適用し、インシデント対応時間の大幅短縮を達成しました。
またLoadMasterの事例として、オーストラリアの銀行は、オブジェクトストレージロードバランサーの移行により応答時間を改善しました。この事例では、2拠点での高可用性構成をとり、サービス応答時間を60秒から2.4秒へと短縮し、顧客満足度とSLA達成率を大幅に改善しました。
これらの事例は、Progress製品が多様な業種・規模に適応し、現実的な運用課題に対して即応力と拡張性を発揮することを強く示しています。
パートナーとしての今後の使命

生成AIを含む最新テクノロジーの急速な進展に伴い、顧客が求める価値も大きく変化しています。これに対し、単に製品やソリューションを提供するだけではなく、課題の発見・定義・実行まで伴走するパートナーとしての役割が、今後ますます重視されていくでしょう。IT環境の複雑化、サイバーリスクの増大、クラウド活用の拡大など、取り巻く条件が厳しくなる中で、お客様の課題を理解し、的確な選択肢を提示し、迅速かつ確実に実装できる体制の構築が求められています。
こうした期待に応えるべく、私たちは「技術」と「業務知識」を融合させ、常に進化し続ける支援体制を整えてきました。お客様が真に求めているのは単なるツールではなく、それらを活用して実現される成果であり、私たちの使命はその成果に責任を持つことに他なりません。
このような取り組みが評価され、オリゾンシステムズは前回に続き、Progress社より優秀パートナー賞を受賞しました。 この受賞は一つの到達点であると同時に、今後さらに進化すべき道標でもあります。テクノロジーの進歩に応じて常に学び、柔軟に変化し、顧客にとって「なくてはならない存在」であり続けるため、私たちは今後も挑戦を続けていきます。パートナーシップとは、信頼の上に成り立つ継続的な協業です。その信頼に応え、共に未来を切り拓いていくことが、私たちの変わらぬ使命です。